MENU

映画「天才ヴァイオリニストと消えた旋律」あらすじと解説

映画「天才ヴァイオリニストと消えた旋律」(The Song of Names)あらすじと解説です。

日本語タイトルや予告から音楽ミステリ―と予測しそう。それも間違ってはいないですが、メインテーマは「信仰」について。

原題の「The Song of Names」が重要です。

ナチスのホロコーストについて扱っています。戦争シーンはほとんどないのに、戦争の悲しさや重さが伝わる映画。

監督は「レッド・バイオリン」のフランソワ・ジラール、音楽は「ロード・オブ・ザ・キング」のハワード・ショア、バイオリン演奏は台湾出身のオーストラリア人ヴァイオリニスト、レイ・チェン。

あらすじと解説(ネタバレあり)

将来有望なヴァイオリニスト、ドヴィドル・ラパポートがデビューコンサートの日に姿を消した。35年後、ドヴィドルと”血のつながらない兄弟”のマーティンは、ある手がかりをきかっけにドヴィドルを探す旅に出る。

映画では過去と現代が交互に描かれています。
実話を元にした映画ではないですが実話に準じたお話し。

少年時代(1930年代)~姿を消すまで(1951年)

第二次世界大戦直前のロンドン。

9歳で出会った2人の少年。
少年の1人はポーランド系ユダヤ人ドヴィドル。もう1人はイギリス人のマーティン。

ポーランドから父親に連れられてロンドンにやってきたドヴィドルは、バイオリンの才能をマーティンの父ギルバートに見出される。金銭的に余裕のないドヴィドル父子を気遣ったギルバートは、ドヴィドルを実子マーティンと伴にイギリスで英才教育をすることを提案。ドヴィドルの父親は安心してポーランドに帰国。ドヴィドルはロンドンでマーティンと伴に暮らすことになる。ドヴィドルをライバル視し渋々迎え入れるマーティン。

ドイツ軍がポーランドを侵攻し、第二次大戦が開始される。ニュースを聞いてポーランドにいる家族を心配するドヴィドル。マーティンはドヴィドルと喧嘩しながらも徐々に彼の才能を認め、2人は友情を育くんでいた。ドヴィドルはジョセフというポーランド人に会う。

戦争中。マーティンとドヴィドルはドイツ軍の空襲で防空壕に逃げこみ、ドヴィドルはジョセフに会う。2人はバイオリンバトルをし喝采をあびる。防空壕から出たマーティンとドヴィドルは空襲に襲われた街を目にする。

ドヴィドルが13歳になったユダヤ教の成人式で、マーティンの父ギルバートはドヴィドルに名器ニコロ・ガリアーノ製のバイオリンを祝いにプレゼントする。複雑な感情になるマーティン。

第二次大戦が終わり、ギルバートはドヴィドルの家族の消息を知るためポーランドに向かうが、ワルシャワで見つけられなかった。ギルバートと伴にポーランドに行ったジョセフは家族が殺されたことを知る。そのショックでジョセフは精神病院に入れられる。

ドヴィドルはユダヤ教を棄教(ユダヤ教をやめる)する。驚くマーティン。

21歳のドヴィドルのコンサートデビュー当日。リハーサル後、本番まで時間のあったドヴィドルはユダヤ人街を訪れる。しかしドヴィドルはコンサート会場に戻らなかった。コンサートはキャンセルされチケット代は客に返金された。

現代(1986年)のマーティンとドヴィドル

マーティンは音楽コンクールの審査員の仕事で、バイオリニストのピーターの演奏を聴き愕然とする。その演奏はドヴィドルにしか教えられないものだった。ピーターは誰からバイオリンを習ったのか。ピーターは「ビリーから習った」と言う。どうやらビリーは1952年にドヴィドルと思える人物にバイオリンを習ったらしい。ビリー曰く、その人物は故郷のポーランドに行ったのではとのこと。

ワルシャワに向かうマーティン。ワルシャワの精神病院に入院しているジョセフを訪ねる。ジョセフは何も語らなかったが、病院関係者からジョセフの友達アナを紹介される。

アナを訪ねたマーティンは、ドヴィドルがユダヤ人街に住んでいたこと、トレブリンカのユダヤ人収容所跡地で会ったことをマーティンに伝える。

マーティンをトレブリンカのユダヤ人収容所跡地へ連れて行ったアナは、ここでドヴィドルの家族が殺されたことを伝える。ドヴィドルがニューヨークへ向かい、マーティンの父ギルバートがドヴィドルに与えたガリアーノのバイオリンを売るつもりだったことも話す。ニューヨークへ向かうマーティン。

ニューヨークのバイオリン店で、ガリアーノのバイオリンを売ろうとした女性がいたことを突き止める。その女性の夫はドヴィドルだった。

ドヴィドルと再会したマーテイン。ドヴィドルに怒りをぶつける。ドヴィドルにバイオリンを教え、高価なバイオリンをドヴィドルに与えた父の恩を忘れたのかと。コンサートを全てキャンセルさせられ失意のまま亡くなった父を思い、ドヴィドルを殴るマーティン。

なぜあの日、ドヴィドルはコンサート会場に戻らなかったのか。

ドヴィドルは語る。

リハーサル後にユダヤ人街を訪れた際、家族の消息を聞いたドヴィドルは、ある男にユダヤ教の寺院へと連れられる。そこではラビ(ユダヤ教の宗教的指導者)がユダヤ人の戦争犠牲者の歌を歌っていた。亡くなった人たちが記憶に残るよう歌にのせて歌いつなぐのだ。その犠牲者の中に自分(ドヴィドル)の家族が含まれていた。

ユダヤ教を棄教したが再びユダヤ教徒になり、犠牲者の歌を生涯バイオリンで弾いて生きていく事を誓った、とドヴィドルはマーティンに話す。

マーティンは実現しなかった演奏会を開くようドヴィドルに要求。迷ったのちドヴィドルはコンサートをやることを決める。前半はオーケストラと後半はソロで、ユダヤ人の犠牲者や彼の家族を弔うための演奏をする。

演奏会後、マーティンはホテルでドヴィドルからの手紙を受け取る。35年前のコンサートをキャンセルしたことへの謝罪、今回のコンサートで借りを返したこと、自分をもう探さないで欲しいこと、死んだと思ってくれ、といった内容だった。

豆知識

「The Song of Names」(映画の原題)の意味

ユダヤ人は口頭伝承という文化があり、この映画では、犠牲になったユダヤ人たちの名前を、人々の記憶に留まるよう、忘れないように音楽にのせて何人もの歌い手が歌いつなぎます。この映画の原題「The Song of Names」はここから来ています。

トレブリンカ収容所

ワルシャワから北東約90kmに存在したナチス・ドイツの強制収容所。ポーランドのユダヤ人絶滅を目的とした収容所で70万人以上のユダヤ人が殺害されました。

ユダヤ児童救出作戦

第二次大戦の直前、反ユダヤ主義暴動がドイツ各地で起きユダヤ人の住居や商店、シナゴーグが次々破壊されます。イギリスでは国をあげてユダヤ児童を救出。キンダートランスポートと呼ばれる作戦が行われます。映画「天才ヴァイオリニストと消えた旋律」でポーランド系ユダヤ人のドヴィドルがキンダートランスポートでイギリスに救出されたのかは劇中で触れられていませんが、当時のイギリスにはこのような歴史的背景がありました。

作品情報

公開:2019年アメリカ、2021年日本
原題:The Song of Names

原作

ノーマン・レブレヒト著「The Song of Names」(英・コスタ賞受賞)

キャスト

登場人物 キャスト
マーティン・シモンズ(大人) ティム・ロス
マーティン・シモンズ(9~13歳) ミシャ・ハンドリー
マーティン・シモンズ(青年期) ジェラン・ハウエル
ドヴィドル・ラパポート(大人) クライヴ・オーウェン
ドヴィドル・ラパポート(9~13歳) ルーク・ドイル
ドヴィドル・ラパポート(青年期) ジョナ・ハウアー・キング
ギルバート・シモンズ スタンリー・タウンゼント
ヘレン・シモンズ キャサリン・マコーマック
ファインマン ソウル・ルビネック
BBCラジオのアナウンサー エディー・イザード

スタッフ

監督:フランソワ・ジラール
製作:ロバート・ラントス リズ・ラフォンティーヌ ニック・ハーシュコーン
製作総指揮:マーク・マセルマン ジョー・ヤーコノ ピーター・タッチ ランディ・レノックス スティーブン・スペンス アナント・シン
原作:ノーマン・レブレヒト
撮影:デビッド・フランコ
脚本:ジェフリー・ケイン
美術:フランソワ・セグワン
衣装:アン・ディクソン
編集:マイケル・アルカン
音楽:ハワード・ショア
バイオリン演奏:レイ・チェン

使用曲

パガニーニ「24の奇想曲」
ブルッフ「ヴァイオリン協奏曲 第1番」
ベートーヴェン「6つのバガテル」
ヴィエニャフスキ「創作主題による華麗なる変奏曲」
クライスラー「愛の悲しみ」
バッハ「シャコンヌ」 他

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次